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夏祭り〜ある少年達の成長の記録〜F
記事No.312 - 投稿者 : アロエ - 2023/06/30(金)21:59 - [編集]
「あっ……んっ……東さん……」
木の幹に背中を押し付け、健史はガクガクと脚を震わせていた。まさに腰が砕けてしまいそうな快感に、淫靡な喘ぎを洩らさずにはいられない。抗う事はおろか、立っているだけでやっとの状態である。 そんな自分の足元に、陽平が跪いていた。六尺の前袋から引き出されたペニスを、今は彼が難なく咥え込んでいる。すでに剛直と化していたそれは、わずか四つしか歳の違わない青年の舌遣いとピストンで、荒々しく脈動していた。 (すごい……俺、こんなの我慢出来ない……) 一方的に始まった行為ながら、狼狽は瞬く間に耽溺へと変わっていく。境内裏の森には、自分達以外には誰もいない。だが陽平からの口淫に悶える少年は、すでに周囲へ注意を払う余裕すらなくなっていた。この場所で昨夜起きた出来事すら、性感の渦に呑まれて脳裏から消え去ってしまう。 「だ、だめ……もう……んんっ……俺……!」 空を仰ぎ、健史は限界を訴えた。踵が浮き上がり、足先まで突っ張ってしまう。もはや自分の意思でその勢いを止める事は出来ず、相手の口内で大量の精が次々と放たれた。全身が強く痙攣するも、やがて一気に力が抜けていく。 ようやく少年のから、陽平が口を離す。 「少しはこれで、落ち着いただろ?」 「………」 陽平がこちらを見上げていた。不浄を受け入れてもなお、その表情には何ら嫌悪の色はない。この場所へと彼に誘われ、何が何だか分からぬ内に全てが終了してしまう。 (東さんが……俺のを、飲んだ……) 絶頂から意識がまた冷静になるにつれ、その事実が健史の中で複雑な感情を呼び起こす。不可抗力とはいえ、陽平に対しあまりにも冒涜的な事をしてしまった。そんな罪悪感を、むしろこちらが抱かずにはいられない。 だが陽平は、まるでそれが当然の帰結だったとばかりに、少年の乱れた褌を締め直して立ち上がる。 「さてと、まだ日も明るいし、今はこのくらいにしておこうか」 表の境内からは、幾人もの声が聞こえていた。神事が終わったとはいえ、陽平の言う通りまだ日も暮れていない時間なのだ。だが皆と一緒に神輿を担いでの巡行が、今は遠い過去の記憶にすら感じてきてしまう。 (これで……終わり……?) 場所が場所だけに、いつまでも痴態を晒している訳にはいかなかった。それでも陽平の淡々とした様子に、健史は一抹の不安を覚えてしまう。ひと時の恍惚を味わった事で、むしろ身体は切なさを募らせてまた疼き始める。射精を終えたペニスも、まだまだ精力が萎える気配はない。昨日とはまるで違う。葛藤すらもはや懐かしい感情であった。陽平を目の前にして、自分はいよいよ貪欲となっていく。 「東さん……」 思わず声を洩らす。 そんな健史の本心をすぐに察した様に、陽平はフッと笑みを浮かべてきた。 「夜はこれからなんだ。焦らなくたって大丈夫だよ」 大人への道を歩み始めた少年へ、陽平はそう穏やかな口調で諭してくる。 終わりではない。夜はまだ始まってもいないのだ。 胸がまた高鳴っていく。健史の後ろ髪を引くものは、もはや何もなかった。 「さぁ、始めろ」 高宮からの指示は、簡素なものであった。 だが自分達が今から何をすべきなのか、もはや分からぬ少年達ではない。寄り添う様にして、地面に横たわる慎一と翔。向き合いながらも、双方の頭と足の向きは真逆となっていた。眼前に互いのペニスが突きつけられている。射精して間もない二人の一物が、また活発に脈打ち始めていた。 片膝を立てて脚を広げると、どちらともなく相手の股間へと顔を埋める。精液に塗れた男根を、慎一と翔は躊躇わずに口へと咥え込んだ。 少年達の新たな欲情を、男が満足そうに見下ろしていた。 「んっ……はぁっ……」 今度は自分から、慎一は翔のペニスを深々と受け入れる。先程の射精が嘘の様に、幼馴染はまた口内で欲望を漲らせていく。だがそれは自分も同じであった。翔の舌が絡められてくると、湧き立つ快感に身体がまた止めどなく震えてきてしまう。 さらに慎一のを咥えながら、翔がリズミカルに頭を揺らし始めた。硬い幹が口で扱かれ、さらに口蓋に亀頭が擦りつけられる。恐怖に怯えながら、男への奉仕を強いられていた昨夜の面影は、もはやどこにもない。 「うぅんっ……あっ……んんっ……」 これに慎一も負けじと、しゃぶりつく様に刺激を加えていく。溢れ出す先走りと唾液が混じり合う。広がる苦味と共に、男根を含む口からすぐに垂れてきそうになる。慎一はそのつど喉へと流し込む。だがそれは、相手の感度が増している確かな証拠でもあった。互いの中で、ペニスが歓喜せんばかりに跳ねている。 「しっかりと、相手が気持ちよくなるよう考えながらするんだ。ただ激しくすりゃいいってもんじゃない。イク事よりも、一緒に感じ合って楽しむのが大事なんだ」 少年達に向けて高宮が助言してくるも、それ以上の余計な介入はなされなかった。後は二人の力量に委ねた様子である。 慎一は一旦、含んでいたペニスから口を離す。今度は舌先に意識を集中させながら、張り詰めた裏筋を舐め上げていく。昨夜よりも冷静に、自分が翔へと多様な快感の術を試みていた。ただ淫蕩に溺れるだけではない。もう一度ここにいる意味を慎一は思い出す。自分達は学ぶために来たのだ。 そして翔もまた、こちらに対して繊細で濃密な愛撫へと変化していく。幹の根元へと指を添え、手淫と同時に潤った亀頭へ舌を這わせてくる。 高宮の言葉通り、ただがむしゃらに攻め立てるよりも、甘美な快感が慎一の身体を包み込む。昨夜の口淫とは明らかに質が違う。翔からも余計な力が抜けていくのが分かった。絶頂へと逸るのではなく、少年達は愉悦を共有しその背徳に酔い痴れていく。 「はぁっ……んっ……んんぅっ……」 もう一度、翔のを慎一は大胆に咥え込む。もはやこれに幼馴染が、性急に腰を動かすといった事もない。だがむしろ一度目の射精時よりも、彼の男根は精力が激っている様な気がしてならなかった。そして翔からのストロークを受けながら、慎一の剛直もまた弾けんばかりとなって、その悦楽を相手へと伝える。 無言で二人を見守っていた高宮が、いつしか慎一の背後へ静かに腰を下ろす。 伸ばされる男の手が、剥き出しの臀部をゆっくりと撫でていく。不意の感覚に、慎一はビクッと身を震わせた。だが高宮のなすがまま、少年は新たな緊張を抱きつつも地面へ横たわり続ける。 やがて若い肌を存分に堪能した高宮は、もはや下着の体をなしてはいない緩んだ褌を、慎一から完全に取り去ってしまう。そして瑞々しく張りのある両丘が左右へと広げられた。 自分では直視する事の出来ない秘所が、ありありと男の目に晒される。 「慎一、そのままジッとしていろ」 小さなプラスチック容器を、高宮は手にしていた。そしてその蓋が開かれると、暴かれた少年の肛門へと器が傾けられる。中から透明な粘液が垂れ落ちていく。 閉ざされた蕾から、ひんやりとした感覚が伝わる。だが慎一はその行為を、今はただ受け入れるしかなかった。 潤ったその部分を、高宮は指先で弄り始める。 「っ……!」 幼馴染のペニスを咥えたまま、慎一は息を呑む。 「安心しろ。お前は、翔に集中するんだ」 全身を強張らせる少年へ、なだめる様に高宮は言ってきた。そして溜まりとなった粘液を丹念に塗り込めながら、少年の秘所が男によってほぐされていく。 (僕の中に……入ってくる……) 突き立てられた中指が、徐々に圧力を加えてくる。本来は排泄口であるそこが外側から押し広げられ、男の指が埋められていく。 慎一の額にじっとりと汗が滲み出る。もはや下手に動く事すらままならない。だが体内で鮮明となっていく未知の刺激に、括約筋が反応してギュッと強く収縮する。 「いい締まりだ」 拒む慎一の身体に対し、高宮は乱暴に事を進めたりはしなかった。慎重に指の抽挿を繰り返しながら、狭窄する内壁にも潤滑液を湿らせていく。ゆっくりとだが確実に、男の指が慎一の奥深くへ押し込まれる。 「あっ……んぅっ……はぁっ……」 塗り込まれた液体の効能なのか、内部からヒリヒリと熱くなっていく。そして異物が逆流してくる感覚に、少年の身体が小刻みに震えてくる。緩みと滑りが生み出されるにつれ、男の指も中で動きを活発にさせていく。今自分は犯されているのだ。内壁へと食い込む圧迫が、慎一にその事実を明確に教えていた。それでも高宮の巧みさか、身体が損傷される様な痛みを感じる事はない。それにつれて、慎一の恐怖も幾分かましになっていく。 やがて高宮の指は、ほぼ根元まで挿入されるに至る。だがそれはあくまでも、最初の段階を終えたに過ぎなかった。少年の身体をさらに慣らすかのごとく、高宮は指の関節を動かして内部を拡張していく。 翔のペニスを口で咥え、そして肛門までもを弄ばれながら、少年の心はいっそうの昂りを覚え始めていた。それがなぜなのかは、慎一自身もよく分からない。だがこの先に待ち受ける運命を前にしても、今や高宮を信頼しきっている自分がいた。 「東さん……」 畳の上で仰向けに寝かされる自分へと、覆い被さる様に陽平が身体を傾けてきた。 集落から離れた場所に建つ納屋の中。窓から差す月明かりが、褌のみの姿となった二人を照らす。もはやこの場所では、誰の目も気にする必要はない。 相手の名を健史がか細く呟くも、そこからしばしの沈黙に空間は静まり返る。だが重苦しい気まずさはなかった。愛しむ様な相手の瞳を、少年もまたしっかりと見つめる。昨夜の自分であれば、狼狽の中でまともに相手を正視する事すら出来なかったはずだ。 「こんな日が来るなんて、考えもしてなかったよ」 やがて陽平が言葉を返す。 「俺も……同じです……」 「昨日よりも、あまり緊張はしていないみたいだね」 こちらの様子を見下ろしながら、どこか安心した様に言ってきた。 確かに昨夜とは違い、全てを覚悟の上で自分は彼に誘われて来たのだ。むしろ今は、不安よりも高揚感の方が大きかった。それでもこれから始まる事を考えれば、心臓は激しく鼓動を鳴らし、そのつかえと圧迫で呼吸も乱れていく。 「いえ……かなり、ドキドキです……」 ありのままに、健史は答えた。もはや強がっていても意味はない。何もかもが未知であり、同時にこれは大人への学びでもあるのだ。 そんな少年の髪を、優しく陽平が撫でてくる。 「だけど、期待でいっぱいだろ?」 「………」 「今日の朝から、俺は健史君とこうして二人になれるのが、待ち遠しかったよ」 「俺とこんな事……東さんこそ、いいんですか……?」 「むしろ、高宮さんには感謝してるくらいさ」 「………」 慎一と翔は今どうしているのだろうか。そんな疑問が今さらながら浮かんでくる。確かに彼らの不運の上に、今の自分と陽平の関係があるのだ。 「高宮さんだって悪い人じゃない。ちゃんと二人へのフォローも考えているさ」 複雑な表情を浮かべる健史へ、察した様に陽平は言ってきた。 「そ、そうですか……」 「むしろ健史君こそ、俺のした事が心の傷になっていないか、心配だったよ」 「俺なら……大丈夫です……」 「今からもっと、すごい体験をする事になっても?」 「はい……」 「なら、もう容赦はしないよ?」 冗談っぽい口調ではあったが、これが陽平の提示する最後の選択なのだろう。だが健史にはもう迷いはない。 「容赦なんて、いりませんよ」 自分への鼓舞も込めて、ハッキリと健史は答えた。 これに陽平が頷く。後は無言のまま、そんな少年へと静かに顔を沈めてきた。 「あっ……」 首筋へと触れる彼の唇に、思わず少年は声を洩らす。分かっていた事とはいえ、肌への感覚に身体をグッと力ませてしまう。 だがそんな健史へリラックスを促す様に、しなやかな体躯を陽平は穏やかに撫で回していく。さらに首から肩、鎖骨の辺りを伝う様に唇が這わされ、ここぞとばかりに甘噛みをしてくる。 「んんっ……あっ……んぅぅっ……」 熱い疼きが掻き立てられていく。反射的に身をくねらせるも、上から陽平の身体がさらに密着してくる。 (すごい……東さんも、こんなに興奮してる……) 絡み合う中で、硬い感触が腰に押し付けられてきた。褌に隠されていても、陽平の脈動と猛々しさを少年はその身で実感させらる。彼もまたこちらに本気で欲情しているのだ。自分へ最大限の気遣いをしてくれているとはいえ、一皮越しの獰猛さを垣間見させられる。だがそれでも尊敬し続けてきたこの青年に対し、健史が恐怖の感情を抱く事はなかった。むしろ彼のありのままな姿を早く見てみたい。そんな欲求すら芽生えてくる。 やがて肌を滑る陽平の手指は、上半身からしだいに脚へと移動していく。 堪らなくなり、健史は自分から相手へと腰を突き動かしていた。布地を張り詰めさせた股間が、彼の指先に触れる。前袋の中で、少年の欲望がビクンッと大きく跳ねた。 「さすが、こっちはまだまだ元気がいいね」 指を絡めて、その昂りをしっかりと陽平が確かめてくる。わずかな圧迫にも関わらず、止めどない先走りに布地はじっとりと濡れてきてしまう。 「お、俺……」 「分かってる」 切迫する眼差しの健史に対し、相手はその右手で褌を難なく解き始めた。 緩んだ前袋の片端から、すぐさま怒張した男根が跳び上がる。昨夜とは違い、少年の亀頭はもう完全に剥けていた。真っ赤に充血したその先端が、今にも精を噴出させんばかりに膨れ上がっている。 陽平がそれを、焦らす事もせずにしっかりと握り締めた。 「あぁぁっ……!」 硬い幹を上下に扱かれながら、乳首には舌が這わされていく。健史は身を仰け反らせ、甲高く発するその声を止める事も出来なかった。青年からの優しくも大胆な愛撫に、身も心も蕩けさせられる。絡められた指が、少年の先走りで瞬く間に塗れていく。それがいっそう滑らかな動きとなり、グチュグチュと淫猥な音を奏でていた。 「健史君……」 やがてこちらの名を呟きながら、陽平が顔を間近にまで迫らせる。 潤んだ瞳で、少年はその端正な相貌を見上げた。心が躍る。相手が男である事など、もはや健史にはどうでもよかった。彼が求めてくる以上、それを拒む理由など何もない。 気付けば、ごく自然に唇を重ねていた。 瞼を閉じて、健史はその柔らかな感触を感じ続けた。行為自体でいえば、口づけなどあまりに今さらで些細な事なのかもしれない。だが性的な快楽とはまた違う喜びと興奮が、少年の中で込み上がってくる。いつしか両腕も、陽平の背中へと回していた。 (俺……キスをしてるんだ……) その事実に、今はむしろ誇らしさすら覚える。陽平に魅了されながらも願い叶わず、想いを募らせるだけの女性は今まで幾人といた事だろう。そんな相手からの愛情を、今は自分が一身に受けているのだ。 「はぁっ……東さん……」 わずかに唇が離れ、健史は吐息を洩らす。 「君にとっては、これはファーストキスかな?」 陽平もまたうっとりとした眼差しで、そんな少年へ問うてきた。 これに健史は、何ら恥じる事なく頷き返す。 「俺……何もかも……東さんとが、初めてです……」 「そんな目で俺を見られると、こっちもどうにかなりそうだな」 「構いません……俺、何されたって……後悔なんか……」 「嬉しいよ」 陽平の言葉に、健史はもう一度瞼を閉じた。今度はこちらから相手を誘ってしまう。 彼の唇が、改めて押し当てられる。だが異性ともいまだ付き合った事のない純朴な少年に対し、相手が求めてくるのは恋愛ドラマの様な甘い口づけなどではなかった。キスの間の息継ぎすらままならない健史へと、陽平は何度も啄んできながら、やがて緩んだ唇の間へと舌を差し込んでくる。 「んっ……んんぅっ……」 息苦しさが増していく状況に顔を歪めるも、健史は相手のなすがままに努めた。侵入してくる陽平の舌が、口内までもを丹念に愛撫していく。それはまさに交わりの行為であった。少年の舌へ陽平のが濃厚に絡められてくる。 (これが……大人のキス……) 圧倒されつつも、健史はこれに応えねばと思った。拙いながら自分からも舌を動かして、積極的にディープキスの要領を模索していく。 二人の荒い吐息、そして舌同士の這わされる音が、暗い空間の中で発せられ続ける。込み上がる衝動が、キスをいっそう貪り合うものへと変えていく。健史はさらに強く陽平の身体を抱き締めていた。全身で彼の存在と温もりを求めずにはいられない。 そんな中で、また陽平が少年の激るペニスを慰めていく。 (昨日とは……全然違う……もっとすごい事を、東さんとはしたはずなのに……) 健史はそれまで、キスなどはセックスの前段階になされる軽い行為という認識であった。結局男にとって、満たされる快感とは射精に直結したものなのだと。だが今こうして陽平と心ゆくままに戯れる中で、欲望に狂わされる快感とはまた違う至福が、自分の心に満たされていく。 やがてそんな少年から、陽平が静かに顔を上げる。 「すごいね。二回目なのに、むしろさっきよりもいっぱい出たんじゃない?」 その言葉を聞いて、自分がすでに射精へと至っていた事に、健史はようやく気付かされた。大量の白濁が胴体に飛び散っている。だがそれでもまるで夢心地の気分で、なおも愉悦の中に健史はいた。 そんな自分の迸らせた精を、陽平は当然のごとく舐め取ってそれを飲み下す。 もはやその光景に、健史が異様さを感じる事はなかった。むしろ肌へと触れるその舌遣いが、新たな快感となって射精直後の身体をブルブルと震わせていく。まさに意識そのものが溶かされる様な感覚。本来であれば一瞬で終わる絶頂が、性欲を吐き出してもなお余韻となって繰り返し少年へと到来してくる。 (もう俺……どうかなっちゃう……) 陽平以外の性体験を自分はまだ知らなかった。それでもこんな悦楽を味わう事は、もうこれからの人生においてないのではないか。健史はそんな気がしてならない。 「東さん……」 「ん?」 自然と今度は、自分が青年の前袋へと手を伸ばしていた。今日すでに二度の射精に導かれながらも、彼の欲望はここまで留め置かれたままである。 (俺も……東さんを……) それが当然の礼儀なのだと、健史は思った。 「今度は君が、俺を気持ちよくしてくれるの?」 こちらの気持ちを、陽平も汲み取る。 「その……上手く出来るか、分からないですけど……」 「気負わなくてもいいんだよ。大事なのは心意気さ」 相手の言葉に、健史は頷く。手から伝わる脈動が、その間にいっそう力強いものとなっていく。陽平が自分に期待してくれている。その確かな感覚が、健史をより行動へと逸らせた。 「イッたばかりだし、少し休憩してもいいんだよ?」 陽平がそう言ってくれるも、決意を固めた少年は頭を振る。 「俺……大丈夫です……」 畳に上で、健史は身体を起こす。 それが抗う行動ではない事を相手も理解し、その身をすぐに退けてくれた。 すると健史は、次に陽平が仰向けになるよう促しながら、自分がその上から身体を重ねる。 攻守が逆転した。予想外の積極さだったのか、そんな少年にやや驚きの表情を陽平が浮かべてくる。 「こういう感じでも、いいですか?」 遠慮がちに伺いを立てる健史を見上げながら、すぐに相手の面持ちが冷静さを取り戻す。、 「むしろ将来のために、今夜は好きなだけ俺を練習台にすればいいさ」 気兼ねするなというつもりで、陽平は言ってくれたのだろう。だが今の健史には、そんな彼の言葉が不本意でならない。 「練習じゃありません」 「え?」 「俺にとっては、今からが本番なんです」 「心強いね」 健史の背中を、陽平の腕が包み込む。 決意を行動で示すべく、陽平へと健史は顔を近付けていく。 これに相手が瞼を閉じる。 陽平へと唇を被せた。その感触を確かめながら、時間をかけて何度も口付けを繰り返す。いつしか息継ぎもスムーズに出来るようになっていた。それにともない、また衝動が募り始め吐息が荒くなっていく。それは陽平も同じであった。 「んっ……はぁっ……」 舌を這わせると、自然な流れで陽平の口内へと導かれる。彼と舌を絡ませていく。完全にこちらが主導権を握る形で行為が進められていた。 その間に、陽平の手が背中を愛撫してくる。 これに応えて、健史も彼の身体へ指を滑らせていく。サッカー部のかつてのエースは、競技を離れて久しくもなお、まるで弛みのない引き締まった体躯を維持していた。そんな彼の肉体を隅々まで堪能し尽したいと、健史は思いを巡らす。 「とても……さっきがファーストキスだとは、思えないくらいだよ……」 顔を上げると、感嘆する様に陽平は言ってきた。上気した彼の顔は、凛々しさから艶やかさを増している。今までの敬愛とは違う意味で、健史の胸を高鳴らせていく。 「東さんのおかげです」 「こういう中で相手を立てるとか、なかなか立派じゃないか」 「まだまだ、教えてもらわないといけない事が、俺にはいっぱいありますよ」 謙遜などではない。今はむしろ、陽平をさらに喜ばせたいという気持ちでいっぱいであった。ここで満足してはならない。健史はそう自分に言い聞かせながら、陽平の身体をより真摯に愛撫していく。 「健史君……んんぅっ……」 自分が感じさせられた様に、相手の首筋や耳を甘噛みする。指で乳首を刺激して反応を伺う。さらに胸から下腹部、脇腹へと、徐々に肌を貪りながら身体を下っていく。 自分の動きに合わせて、陽平もいっそうその身を敏感に震わせてくる。彼のそれが演技ではない事を物語る様に、前袋の布地が張り裂けんばかりに突き上がり、先走りを滲ませていた。 改めて健史がそこに触れるや、もう耐えられないとばかりに、陽平が己の褌に手を掛ける。 「俺が……やります……」 すぐにそう、健史は伝えた。 陽平がこれに頷く。 腰に締められていた彼の六尺を、少年の手が解く。昨日の自分には考えられない行動であった。緊張を抱くも余計な焦りなどはない。自分が陽平と対等に行為を進められるのだ。その自信が、健史をこの状況に至っても落ち着かせる事となった。 (東さんのチンポ……やっぱすごいな……これで、何人もの女を……) 前袋から露わとなる、勇ましい男の象徴。健史は間近でそれに魅入ってしまう。きっと誰もがこの姿に理性を失い、狂い痴れた事であろう。男である自分ですらそうなっているのだ。 (俺よりも、やっぱり女の人にされる方がいいですか?) 心の中でそう問い掛けながら、健史は引き寄せられる様に、その反り返る男根へ顔を近付けていく。 「あまり無理をしなくてもいいよ」 少年の行動に、陽平が言ってきた。だがその青筋を浮かび上がらせた幹は、少年の口元で脈打ちながら先走りを垂らし、雄の匂いを漂わせてくる。 「そんな事ありません……したいんです……」 本心からの言葉であった。健史は大きく口を開けて、その欲望を深々と受け入れていく。 「はぁっ……んっ……うぅんっ……」 境内裏で受けた性技を思い返しながら、健史は舌を動かしていく。これに青年の欲望がいよいよ荒ぶり出していた。その息吹を感じながら、自身の身体もまた熱くなっていく。 (こんなの……俺の方が、堪らないくらいだ……) 内なる衝動に、少年はより激しくペニスを貪っていく。それにともない、陽平からの先走りも次々と溢れ出してきていた。だがそれを躊躇いなく、健史は唾液と共に飲み込んでいく。むしろ相手の欲情をその味として確かめながら、健史の心は昂ぶるばかりとなっていた。 「いいよ、すごく気持ちいい」 自分へと埋まる少年の後頭部を、陽平が感謝する様に撫でてくる。 これに応えて、健史は活発に口でのピストンを繰り返していく。喉の奥にまで亀頭が食い込んでくる。何度も鳴咽を洩らしそうになるも、その辛苦が少年の献身を揺るがす事はなかった。 「また興奮してきた?」 そんな中で、陽平が問うてくる。 彼への奉仕を続けながら、健史はいつしか無意識に自身のペニスを強く握り締めていた。すでにそれはまた欲望を漲らせ、二度の射精を過ぎてもなお陽平に勝るとも劣らぬ硬さとなっている。そして高まる疼きの中で生じる欲求が、少年をさらなる行動へと突き動かしてしまう。 (だめだ……東さんのに、集中しないと……) 健史はそれでも、己の剛直を扱き立てる手を止める事が出来なかった。 「あっ……!」 やがて陽平がなおもペニスを屹立させる中、少年の方が先に精を迸らせてしまう。そして結局は最後の一滴までもを絞り出すまで、自身が擦る手を止める事が出来なかった。 「す、すみません……俺……我慢出来なくて……」 快感と同時に、深い後悔に襲われていく。一気に無様な状況となり、健史は泣きそうな顔となる。 だが陽平にはまるで機嫌を損ねる様子はなく、しょうがないとばかりに苦笑してきた。 「気にしなくたっていいよ。むしろここまで俺を満足させてくれただけでも、十分さ」 陽平はそう言うと、せっかくの昂ぶりが冷めぬ内にとばかり、彼もまた少年の眼前で一心不乱に自慰を開始する。 これを見て健史は、意気消沈している場合ではないとすぐに自分を奮い立たせた。勢いを挫いてしまったが、陽平に対してやれるべき事はまだ残っている。 「東さん……」 彼が扱くペニスヘと、健史はもう一度口を開けた。 これに陽平は、息を荒げながらも嬉しさを示す。 「もう出る……健史君……」 限界寸前となった欲望が、少年の口腔に納められた直後、それは勢いよく弾けたのだった。 「んっ……はぁっ……んんぅっ……」 夜が更けていく中で、少年達の発する喘ぎと吐息はますます妖艶さを帯びていく。 いつしか慎一は、地面に四つん這いの姿勢にさせられていた。そんな自分に、幼馴染が膝立ちで向き合う。彼のペニスをなおも咥えながら、背後には高宮が位置している。 突き出された慎一の肛門には、今や人差し指と中指がまとめて挿入されていた。じっくりと押し広げられた少年の内壁は、もはや男からの蹂躙に何ら拒絶を示す事もなくなってしまう。 「どうだ、そんな痛くもないだろ?」 少年の奥深くを弄りながら、高宮が問うてくる。 悶える慎一であったが、確かにそれは苦痛によるものではない。いよいよ指は大胆に自分を犯してくるも、こちらの身体が許容出来る以上の激しさを高宮が強行してくる事はなかった。 そんな二人の光景を、翔が見下ろしている。慎一からの口淫にいよいよ快感を高め、その表情は呆けた様に緩んでいた。頬張る彼のペニスもまた、勢いよく跳ねている。 「っ……!」 奥深い部分で、グイッと指が食い込んできた。その途端、脳天にまで突き刺さる様な刺激が慎一の中で駆け巡る。 背筋を弓形に反らせる少年の反応に、高宮がニヤリと笑みを浮かべた。そして少年の中に見出した箇所を、これでもかと集中的に責め立てていく。 ガクガクと、姿勢を支える四肢が震え、汗が今まで以上に噴き出してくる。それは慎一にとって初めて体験する感覚であった。身体の芯から熱が湧き起こり、痺れる様な疼きが全身へと広がっていく。 「へへ、もう一丁前に、ケツで感じてるのか?」 「あっ……んっ……んぁっ……」 触られてもいない慎一のペニスが、下腹へと張り付かんばかりに仰いでいた。 すると正面に位置する翔が、自分を忘れてくれるなとばかりに、腰を動かして慎一の口内でペニスを抽挿させてくる。 前も後ろも、慎一はなされるがままとなっていた。止めどない刺激に、意識すら遠のきそうになる。だが不思議とそれは辛苦などではなく、少年の心と身体はいっそうの何かを求めて止まなくなっていた。 「し、慎一……あぁっ……!」 ついに限界を迎えた翔の欲望が爆ぜ、また大量の白濁が噴き出す。 高宮はそれを待っていたかの様に、それまで執拗に刺激を加えていた指を、少年の中から直後あっさりと引き抜いた。 慎一は放たれた精を飲み込んでいく。だが幼馴染が快感を堪能する中で、感覚の中断されてしまった自身の身体は、もはや後追いの射精だけで満足出来る気がまるでしなかった。芽生えてしまった未知なる欲求は、怒張する男根から生じるものではないのだ。 「翔」 全てを吐き出し放心状態となっていた少年は、高宮の呼び掛けでハッと我に返る。 「はい……」 「お前、本当にまだ童貞なんだな?」 「………」 これに翔がコクリと頷く。 「今夜はこいつの口で、もう満足か?」 「えっ……」 「こっちは、もう準備万端だ」 「………」 高宮の視線が、慎一の緩んだアヌスへと注がれる。 おそらく何を意味しているのか、翔もすぐに悟ったのであろう。再び彼の呼吸が乱れていく。 その様子を見て、男はまた笑みを浮かべた。 「どうだ、慎一?」 高宮がこちらにも問い掛けてくる。 心臓の鼓動がまた激しくなっていく。翔と同じく、こちらも何を求められているのか、もはやここに至って分からぬはずがなかった。翔がこちらをジッと見ている。自分の返答を待ち侘びている様子が、無言の中でも手に取るように伝わってくる。 「お前が、翔の筆おろしをしてやらないか?」 決定的な一言が、そんな少年へと放たれた。 おそらく昨夜の自分であれば、この残酷な提案に絶望と恐怖で泣き崩れていた事であろう。だが今はなぜか、高宮のそんな言葉を聞いても不思議と心は落ち着いていた。そして事の是非を思考するよりも先に、肛門の奥がまた沸々と熱くなっていく。 (僕が……翔を……) 肝心の翔は、目を伏せて黙り込んでいる。だが口から出された彼のペニスは、果てたばかりであるにも関わらず、慎一の眼前でまた幹を起き上がらせていく。その光景が、幼馴染の意思を明確に示していた。愛する恋人と共に成長するはずだった未来は、目先に提示された欲望によって少年の心を狂わせていく。 「友達を、立派な男にしてやれ」 もはや高宮が、少年達を無理矢理に従わせる必要はなかった。 四つん這いのまま、慎一は翔を見上げる。 「慎一……」 か細い声で、彼が呟く。だがこちらへと向けられるその瞳は、まるで獲物を見定めるかのごとく、今や獰猛な獣の光を宿していた。 「翔……」 これに慎一は、静かに頷き返す。 COPYRIGHT © 2023-2024 アロエ. 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作者 アロエ さんのコメント ようやくリアルと物語の季節が一致してきました。
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